フレデリックの三原健司(Vo/Gt)・康司(Ba)と須田景凪によるスペシャル対談。
お互いの出会いからコラボ曲「ANSWER」の裏側を話し合った前編に続き、後編ではコラボEP『ANSWER』の中身についてじっくりと語り合ってもらった。
EPには表題曲に加え、フレデリックによる「テイルズ オブ ルミナリア」のオープニングテーマ「TOMOSHI BEAT」、須田景凪による同エンディングテーマ「リグレット」、そして「veil」と「オドループ」というそれぞれの代表曲のカバーという5曲を収録。
対談では、『テイルズ オブ』シリーズへの思い入れから楽曲制作の背景、そしてお互いのこれからについて語り合ってもらった。
康司 僕は中学生時代からずっとやってますね。
健司 俺は自分がプレイしていたというよりは、康司がやっているのを見ていた感じです。
康司 初めてゲームに触れた時から、いろんなゲームがある中でもテイルズを好んでやっていました。
「テイルズ オブ エターニア」、「~シンフォニア」、「~デスティニー」、「~デスティニー2」とか、最新の「~アライズ」もやってたりして。
印象としては、物語が深いなっていうのを感じていました。
中学の頃からぼーっと妄想するのが好きだったんですけど、そういった自分の想像の世界を築き上げてきたゲームという気もする。
すごく馴染みのあるシリーズだったんで、お話が来た時には、正直びっくりしました。
須田 自分も昔から好きなんですけど、自分が初めてやったゲームは『ゼルダの伝説』とか『ファイナルファンタジー』で、その後に出会ったのが「テイルズ オブ ジ アビス」だったんですね。
「ジ アビス」のオープニングがBUMP OF CHICKENの「カルマ」だったんです。
当時はゲームにオープニング曲があるという印象もなくて、そこでまずびっくりしたし、感動したんです。
で、プレイしてみたら、絵柄はポップで可愛かったりスタイリッシュなんですけど、蓋を開けるとすごく重い内容で。
まだ小学生か中学生の頃だったのですが、重たいテーマをポップに描くというバランス感にはかなり影響を受けた気がします。
須田 まさにそのふたつが五分五分って感じでした。
もちろん嬉しいですし、絶対に作るのですが、今回の「テイルズ オブ ルミナリア」は今までのシリーズと違って初めてのアプリゲームで、21人のキャラクターにそれぞれのストーリーがあるという概要をいただいたんですよ。
ということは、エンディングテーマがそれぞれのプレイ後に流れるわけだから、1つのキャラクターのことを書こうとすると成立しない。
もっと大きな枠で捉えて書かなきゃいけないということを思って。
そこのテーマとずれないように気を付けなければとは思いました。
康司 「TOMOSHI BEAT」は、自分たちが今考えていることと、今回の「テイルズ オブ ルミナリア」とマッチしたような感じですね。
ストーリーの中の21のキャラクターたちが自分たちなりに思っている灯というか、心に灯しているものを重ね合わせて考えていたので。
康司 この曲は制作の都合上、めっちゃ早く録った曲だったんです。
僕らは2020年に『ASOVIVA』っていうEPを出したんですけれど、そのタイミングで「TOMOSHI BEAT」を録ってました。
康司 すごく大きいですね。
だから、今回もその経験を武器にして制作に活かしていったのはありますね。
離れていても一人だからやりやすいこともあるし、直接会わずにやれることが増えた状態で、今回のコラボの曲も作れたので。
その経験は活かされています。
健司 現場主義のバンドではあるんですけど、柔軟なところもあって。
そもそも去年の2月24日に横浜アリーナでワンマンライブをやった2日後から、大規模なライブができないことになって。
ライブが3、4ヶ月ぐらいなくなった時に、自分たちはライブだけがやりたくてバンドをやってるわけじゃないし、今はチャンスだと思ったんですよね。
宅録を覚えたら面白いっていう考え方で『ASOVIVA』を作って、それで自分たちの個性をより出すことができたことがわかった。
レコーディングスタジオに入れるようになった後も「この曲は宅録でいいんじゃないか」と思えたらそれで制作するようになったりしたし、レコーディングへの考え方はすごく変わりましたね。
ライブに関しても、自分たちでオンラインライブを企画して、アコースティックでしっとりとした雰囲気でやったり、映像チームと凝った映像を作ったり、与えられた状況の中でいかに面白いことをするかをずっと考えていて。
メンバーが勉強して自分たちで映像を編集できるようになったりもした。
そうやって楽しむことができるようになったんですよ。
だから、バンドにとってはすごく大変だったけど、逆に面白いことを見つけることができたのかなって思います。
須田 自分はもともと数年前まですべて自宅で完結させていて。
須田景凪という名義を設けて初めて生楽器を録ってみたり、いろんなチャレンジをしてきたんですね。
そういう中で、レコーディングスタジオのほうがいい音で録れるとか、宅録は多少音が悪くても細かいニュアンスまで詰められるとか、そういうことがわかってきて。
自分も、コロナ禍だからこそ、よりニュアンスを突き詰めるやり方みたいなのを見つける時期になったと思います。
ライブに関しては自分は全然やってこなかったし、自分にとってはめちゃくちゃ緊張するし気が重いことではあったのですが、ようやくライブに対して前向きになってきたところで、それが急になくなってしまった。
その気持ちをすべて制作にまわしていった感じでした。
須田 自分は「ANSWER」を共作で作った後に「リグレット」を作りました。
須田 先ほどの話の続きになってしまいますが、シナリオがいっぱいあって、それぞれのキャラクターごとにストーリーがあるんですね。
最終的なゴールは同じだとしてもそれぞれの正義があって。
そのすべてに当てはまるものではないといけないということを意識して、それを歌詞に反映して作っていきました。
あとは、ひとつのキャラクターのゲームが終わって、エンディングにこの曲が流れて、また次のキャラクターのゲームが始まるんで、何回も聴くことになる曲になる。
感動的なエンディングテーマというよりは、あえてすっきりと最初に戻れるようなエンディングを書いたほうがいいと思って作りました。
須田 自分は、そもそもどの曲をカバーしようかめちゃくちゃ迷って。
フレデリックのみなさんにも話をしたりしたんですけど、そこから両アーティストがお互いのリスナーにプレゼンするような感覚のものにしたらいいんじゃないかなって話になって。
だから、自分は「フレデリックってすごいバンドがいるんだ」ということを改めて提示したくて、代表曲として「オドループ」を選ばせてもらったんですね。
で、楽曲をリスペクトしてやっていく姿勢は絶対に変えたくなかったので、難しい塩梅だったんですけど、基本的に原曲に忠実なことをしながら節々で自分の色を最低限入れていくような感触で作っていきました。
フレデリックのリスナーが聴いても、改めていいねって思ってくれるバランスが理想だなって考えてました。
康司 須田くんの「オドループ」を聴いた時、すごくうれしくて。
一緒に共作すること自体が特別な経験なんですけど、こうやってお互いの曲をカバーし合うのも、なかなかない経験で。
その中で、須田くんは繊細な部分があるから、「オドループ」の一個一個のフレーズに対して「ここは尊重してくれたんだろうな」みたいな部分も見えたりして。
自分たちからしても発見が沢山あって、得るものが多かった経験でした。
健司 で、「veil」は、今の須田景凪を代表する曲っていうことで、フレデリックとしてカバーする中で、もともとの楽曲の軸の部分は揺るがない中で、自分たちの色をどう入れるかを大事にしてましたね。
原曲をぶっ壊すというよりは、限りなく近いアレンジではあるんですけど、バッキングをちょっと変えたりとか、自分たちの個性を入れていくみたいな感じでした。
たとえば、フレデリックの「veil」はギターの(赤頭)隆児の個性、(ドラムの)タケちゃんの個性が出てるなってわかるような感じにして。
人が見えるアレンジは意識しました。
須田 自分も「オドループ」を改めて分析して、いざ自分でオケを作り上げていく段階で「自分だったらベースはこうするな」って打ち込んだら全然違う景色になっちゃって。
「ああ、このフレーズめっちゃ大事だ」ってそこで気付いたりして。
康司 わかるわー(笑)。
須田 構築の仕方がお互い違うから、めちゃめちゃ勉強になりました。
ここを変えてもバレないでしょって思っていても、実際に変えたら全然変わっちゃうんです。
そういう、これは絶対に必要だっていうパーツがいっぱいあって、余地を探すのが大変だったし、楽しかったですね。
康司 あとでパラデータ送ってくれ(笑)。
康司 須田くんはひとりでやっていて、僕らは4人で制作しているので、まず違う部分があって。
けど、その中でも共通点があるので、そこが魅力的だし、逆に、そこまでいろんな部分に繊細になれるところに、僕は最初に出会ってから、どんどん引き込まれた感はありました。
もともと通じ合っている部分があったけど、楽曲を作ることによってできた絆もあるなって感じています。
健司 今も走り続けているし、びっくりするような毎日を送っているんで、まだ振り返れないんですけど(笑)。
今は『フレデリズム3』というアルバムを作っていて、この1年でずっと積み重ねてきたことが形になってきている感覚がありますね。
武道館もそうだし、この『ANSWER』もそうだし、アッコさんとの共作でTikTokでバズったりっていう状況もそうだし。
コロナ禍で音楽業界全体がカオスというか、どこに向かっていいかわからない状態になって。
とりあえず自分たちで正解を出していくのがいいんだろうと思って出したものが、1年たって形になってきているなって実感することが多いです。
でも、今は振り返ってどうこうというよりは、ずっと夢中になって、状況に喜びつつも、緊張の糸は切らないようにしている感覚ではありますね。
まさにレコーディングしている時期なので。
ずっと走り続けてている状況です。
康司 そういう中でこうして須田くんと会えたり、和田さんと楽曲を作ったり、正直自分でも想像していなかったフレデリックになっていると思います。
やっぱり、自分で想像できる範囲じゃなくって「こんな俺たちがいるんだ」って思えるのが最高だなって。
こういう時代の中でそんなことを思えて行動できることに、すごく自信を感じてますね。
それがひとつ指針になっている部分でもあるし。
けど、健司の言うように、今は最中で、火をもっともっと熱くして、自分たちが面白いと思えるものや、時代の中で不安に思っていることだったり、人の背中をちょっとでも押せるようなことや、そういうものを形にできないかを考えている最中という感じです。
須田 自分は『Billow』という初めてのフルアルバムを出して、そのツアーもなんとか無事にできて。
じゃあこれからどうしていこうかって考える時期があって。
この前出したってアルバムの中では、それこそ、バルーン名義でひとりぼっちでやっていたらできなかったことをたくさんやってみたりとか、音楽性の幅を広げたいって思っていたことが、ある程度出し切れたイメージが自分の中であって。
先日、ボカコレというボーカロイドイベントがあって、久しぶりにボーカロイドの為に曲を書いたりもしました。
今は、ここ数年で蓄えた武器をどう研いでいこうと考えながら、たくさん曲を書いている感じです。
須田 自分としては、フレデリックのライブには昔から行かせていただいてましたが、実はライブバンドというイメージがなくて。
ライブがなくても全然成立するというか、いわゆるネットカルチャーとバンドカルチャーの真ん中のラインにいる感じがしていたんです。
コロナを経て、宅録を導入したり、作り方が変わってきたわけじゃないですか。
そういうのを受けて、シンプルにどういう作品ができてくるのか、『フレデリズム3』がいちリスナーとしてめっちゃ楽しみです。
健司 俺は須田くんのアリーナライブがめっちゃ見たいですね。
LINE CUBEに見に行かせてもらったことがあって、その時も思ったけど、アニメーションとの親和性も高いし、ステージを作り上げれば上げるほど、須田景凪っていうアーティストの世界観が広がるから、もっとデカいところで見たいなって単純に思ったのがあって。
で、願わくばセンターステージで観たいですね。
康司 僕は、須田くんが次はどういう楽曲で攻めてくるのかって、あんまり想像できないんですよ。
それがすごくいいなって思っています。
須田くんの今のモードって、須田くんにしかないものだし。
だから、それをもっと見たいですね。
次はどんな音楽を作るんだろう?って、一緒にやったからこその期待してます。
新しい曲ができたら、すぐに送ってほしいぐらいです(笑)。
須田 送り合いたいです(笑)。
interview:柴 那典