フレデリックの全国ツアー『FREDERHYTHM TOUR 2025 -飽くまで創造-』が29日宮城・仙台GIGSで幕を閉じた。今回のツアーでは全国9都市をまわり、12公演を行ったフレデリック。12本中11本目、11月22日に開催した東京・Zepp DiverCity(TOKYO)公演では、研ぎ澄まされた演奏で観客を熱狂させた。
FRDCのロゴが目を惹くステージには、床に4本のラインが引かれ、メンバー4人が横一列に並ぶセッティングが組まれていた。開演時刻を迎えると、高橋武(Dr)、三原康司(Ba)、赤頭隆児(Gt)が順に登場し、音を重ねていく。3人がセッションを繰り広げるなか、最後に三原健司(Vo/Gt)が登場すると、赤頭の軽やかなカッティングから、1曲目の「シンセンス」が始まった。音楽が立ち上がっていく過程、“創造”の源泉を見せるようなオープニングだ。
4人組バンドとしての最小単位を感じさせるオープニングでもあったが、この曲で〈君がいないとかナンセンス〉と歌っている通り、彼らはいつも、音楽を通じたオーディエンスとの交流を強く望んでいる。2018年リリースの同曲が、間の取り方も絶妙な今ならではのアンサンブルで鳴らされるなか、バンドのグルーヴは観客との作用によって深まっていった。切れ味鮮やかなドラム。歌うようにうねるベースライン。勢いを増すギターカッティング。熱のこもったボーカルのロングトーン。そういった一つひとつに観客は反応し、歓声を上げる。観客の反応を受けて、演奏の熱量もまた上がっていく。
バンドが曲間を繋ぐなか、最初のブロックでは「スパークルダンサー」「逃避行」が連続で届けられた。MCを始めようと健司が一言挨拶するも、拍手はなかなか止まない。メンバーは「なになに?」と驚きつつも嬉しそうだ。今回のツアーは、アルバムやEPのリリースに伴うものではなく、明確なコンセプトもない。ゆえにメンバーは「じゃあ、フレデリックの信念や本質をあなたに届けるツアーにしよう」と考えたという。その信念とは「今日このステージでやるライブが人生の最高到達点であるべき」というもの。セットリストを固定する箇所を作ることで、アレンジを大胆に追求でき、ツアーを重ねるごとに演奏の練度が上がっていく。その伸び幅が見えやすい構造でもあり、今のフレデリックならではの楽曲への解釈や、その日ならではの熱量を演奏に乗せることで、常に進化する姿勢を体現した。その結果、最初のブロックから既に、ライブ終盤と錯覚するかのような盛り上がり。「曲や音楽がもっと好きになること間違いなし。これからも最高のフレデリックを見せてくれるんだろうと思うこと間違いなしなので、もう手ぶらで楽しんでください」。MCを締めくくる健司の言葉には自信が滲んでいた。
「リリリピート」から演奏を再開。「真っ赤なCAR」は、レトロなシンセサウンドとディスコ調のリズムによる原曲から一転、音を重厚に響かせることで、ロックの迫力を加えたアレンジになっていた。続く「ナイトステップ」はリフを中心に展開し、それ以外の音は大胆に間引いたアレンジだ。リズムをあえて前のめりにしたり、後ろにひっかけたりといった微細な操作もありつつ、4人は精度の高い演奏を繰り広げ、抜群のコンビネーションを見せた。
バンドはスタジオセッションの延長のような自然体で、観客を信頼しきった様子で演奏を楽しんでいる。同様に観客もバンドを信頼しきった様子で、好きなように楽曲を楽しんでいる。そんなバンドも観客もノリにノッている状況で、今年7月に配信リリースされた最新曲「悪魔」が演奏された。どこまでも自由なダンスの光景が広がるなか、フレデリック至上最高難度のトリッキーなリズムの手拍子を軽快にこなす観客が頼もしい。このあとに代表曲「オドループ」が来る曲順からは、「悪魔」を新たなキラーチューンとして育てようという気概を感じたが、ツアーを通じて思い描いたイメージを実現できたのではないだろうか。
「オドループ」の加速するアウトロから、シームレスに「Happiness」へ。さらに高橋のクールなドラムソロを経て「イマジネーション」が情熱的に鳴らされ、観客の興奮は最高潮に達する。ここでライブの前半が終了。夢中になっているうちに、気づけばここまで来ていた――観客の多くはそんな感覚だったのではないだろうか。健司が「正直フレデリックめちゃくちゃ仕上がってます」と手応えを語ると、観客が声を上げて同意。「あなた様たちも仕上がってる」と笑顔を見せた康司は、自由に楽しむフロアの様子を見て、「緩急を受け止めてもらえている」と感じたのだそう。激しく盛り上がる瞬間も、静謐な空気感も内包し、等しく大切にする――フレデリックのそういった姿勢は、音楽を超えて、人生においても豊かさをもたらしてくれるものだ。そんな音楽を観客に、それぞれの踊り方で受け止めてもらえたことで、康司は曲を作り続けてきた自分の人生ごと認めてもらえたような気持ちになったのだろう。「今まで作ってきた曲もよかったと思える。ここに立てて嬉しいです」と感慨を語っていた。
「CYAN」からライブの後半へ。健司と観客が交互にメロディを歌い交わす「飄々とエモーション」では、観客にコブシを効かせるよう求めるなどユニークな場面も。「煌舟」からの「銀河の果てに連れ去って!」、「KITAKU BEATS」からの「遊び足りないのでもう1曲!」で繋がれた「ジャンキー」と、フレデリックと観客の勢いは止まらない。「しっかり俺たちに届きました。あなたにも届いたんちゃうかな? 最高の1日でした!」と観客に伝えるメンバーも、ステージに拍手喝采を送る観客も、爽やかな笑顔を浮かべながら、今この瞬間を謳歌しきってライブ本編を駆け抜けた。
日によって演奏曲を変えたアンコール1曲目、この日は「FEB」が披露された。FEB=2月は健司と康司の誕生月。健司は母から、自分たち双子は周囲に支えられて育ててもらったと聞かされてきたという。「生まれてから今までいろいろな人に支えられてきた」という実感が、人との繋がりを大切にする姿勢に繋がり、ひいてはバンドの在り方を形作っているのだろう。その上で、ファンとの関係を「横並びで前に進んでいける関係」「途中で休んだりしてもええで、まあ、俺らは先行っとくけど、みたいな。そんなふうに言える関係やと思ってる」と表現。きっと追いついてくれるという信頼が、言葉の裏にある。
「これからも俺らは間違いなく進化していきます。その進化を支えてくれているのはあなたですから。今日あなたがここにいてくれたことに感謝させてください。ありがとうございます。これからもよろしく!」。そんな言葉とともに、ラストに届けられたのは「名悪役」。進化し続ける意思を改めて示すとともに、ライブを締めくくった。
この日のライブを振り返ると、改めて印象に残っているのは、バンドの演奏の緩急の豊かさと、その振れ幅を自然に受け止め、楽しむ観客の姿だ。それを可能にしているのは、バンドの成熟した佇まいと、観客への信頼だろう。ツアーを通じて、全国のファンとの信頼関係を改めて強固にしたフレデリック。この関係性が続く先で、彼らはさらなるイマジネーションを発揮することだろう。
文:蜂須賀ちなみ
FREDERHYTHM TOUR 2025 -飽くまで創造-
2025年11月22日(土)東京・Zepp DiverCity
<セットリスト>
1.シンセンス
2.スパークルダンサー
3.逃避行
4.リリリピート
5.真っ赤なCAR
6.ナイトステップ
7.悪魔
8.オドループ
9.Happiness
10.イマジネーション
11.CYAN
12.飄々とエモーション
13.煌舟
14.銀河の果てに連れ去って!
15.KITAKU BEATS
16.ジャンキー
En1.FEB
En2.名悪役
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Photo by 佐野和樹

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